ベネッセハウスミュージアム
「自然・建築・アートの共生」をコンセプトに、1992年に開館した安藤忠雄設計の美術館とホテルの機能を備えた施設です。直島の自然と場所の特性をとりこみ、アーティストたちがこの場所のために制作したサイトスペシフィック・ワークやコレクション作品が展示されています。
この美術館は、展示空間が多彩なので、楽しく鑑賞できます。
来訪したのは土曜日だったのですが、予約制ではなくてもスケールが大きいためかゆったりと見れました。階段やスロープが多いのですが、安藤建築のそれはメンドクサイというより、探検気分でついつい上り下りしてしまう感じですね。
茶のめ
屋外にもアートは点在するのですが、時間が押していて全部回れなかったのが残念です。
ヴァレーギャラリー
境界や聖域とされる谷間に沿うように建てられた安藤忠雄設計の屋外を取り込んだ建築と周辺の空間一体で構成されます。ここでは、作品とともにエリア全体のランドスケープを体感し、季節ごとに異なる表情を見せる豊かな山の植生を楽しめます。安藤が「小さくとも結晶のような強度を持つ空間をつくろうと考えた」と言う、祠をイメージした建築は、地形に沿って30度に開いた台形の平面や二重の壁構造、スリット開口や切り込みの入った鉄板屋根などが特徴的で、内部空間は内省的である一方、海辺に建つシーサイドギャラリー同様、半ば屋外に開放され、光や風など自然エネルギーの動きを直接的に感じ取れます。
その屋外に展開する「ナルシスの庭」は、草間彌生が1966年ヴェネチア・ビエンナーレでジャルディーニ会場の芝生に大量のミラーボールを敷き詰め、世界的注目を集めることになった記念すべき作品です。反復する球の集積が周囲の自然や鑑賞者の姿を映し出し、私たち一人一人が一つの生命体として自然と一体化し、無限に広がっていくような感覚を味わいます。
一方、恒久展示である小沢剛の「スラグブッダ88-豊島の産業廃棄物シャリ語のスラグで作られた88体の仏」は、直島の歴史に残る88の仏像をモチーフとし、豊島で不法廃棄された産業廃棄物を焼却処理した乃日最終的に生じたスラグを素材に2006年に作られました。小沢は、このたびの「ヴァレーギャラリー」整備にあたり、本作を一部改変し、もともと柵人を展示していた池のほとりの反対側にあった巨石周辺にも積石を置きました。原始自然信仰やものづくりの原型、自然の循環などを感じさせる積石は、参拝のような手順を想起させ、人々の静かな参加を誘うかのようです。
こうして、安藤建築と周囲の自然や地域の歴史を「反映」するこれらの作品が響き合い、改めて自然の豊かさや共生、根源的な祈りの心や再生などについて意識を促します。
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