土浦亀城邸とは
「土浦亀城邸(つちうらかめきてい)」は、1935年(昭和10年)に建築家・土浦亀城(つちうら かめき)と妻の信子が自邸として設計した、日本を代表する戦前モダニズム建築の傑作です。
当時の主流だった瓦屋根や土壁の日本家屋とは対極にある「白い箱」のような外観で、現代の都市住宅の原形ともいわれています。
1. 建築としての特徴
- 「白い箱」のモダンデザイン:装飾を排した立方体のフォルム、フラットな屋根、大きなガラス窓など、バウハウスに代表される国際様式(インターナショナル・スタイル)の影響を強く受けています。
- 立体的な空間構成(スキップフロア):内部は、吹き抜けのあるリビングを中心に、半階ずつフロアがずれる「スキップフロア」が多用されており、狭い面積ながら開放的でダイナミックな空間が広がっています。
- 先進的な設備:90年も前でありながら、システムキッチンや天井パネルヒーティング(全館暖房)など、現在の住宅に劣らない合理的な設備が備わっていました。
2. 歴史と背景
- フランク・ロイド・ライトの影響:土浦亀城は、帝国ホテル設計のために来日した巨匠フランク・ロイド・ライトに師事し、後に渡米して修行した経歴を持ちます。
- 解体の危機と移築:もともとは品川区上大崎(目黒)にありましたが、老朽化などで一時は解体の危機にありました。しかし、その文化的価値から2024年に港区南青山の「ポーラ青山ビルディング」敷地内へ復原・移築され、保存されることになりました。
3. 文化財としての評価
- 1995年:東京都指定有形文化財に指定。
- 1999年:モダン・ムーブメントにかかわる建物として「DOCOMOMO Japan 20選」に選定。



見学した際の感想
1. 「現代の住宅」に通じる先駆性への驚き
1935年の建築でありながら、今のモダンな注文住宅と遜色ないデザインや設備に衝撃を受けました。
- 今、新築で建てられたと言われても違和感がなく、時代を先取りした感性に感動します。
- 日本初のシステムキッチンや、当時の最先端だった暖房設備(パネルヒーティング)を見て、その合理性に驚きます。
2. スキップフロアによる「空間のつながり」
単に部屋が並んでいるのではなく、段差(スキップフロア)で空間が緩やかにつながる構成が素晴らしいです。
- 「狭さを感じさせない開放感がある」:実際の面積以上に広く感じられ、どこにいても家族の気配が伝わるような設計に心地よさを感じます。
- 玄関からキッチンへ直接荷物を運べる裏動線など、「主婦(妻・信子さん)の視点」が活きた家事動線の細やかさに感心しました。
3. フランク・ロイド・ライトの教えを感じるディテール
師匠であるライトの影響を感じつつも、それを日本独自の形に消化したディテールに要注目です。
- 「高低差の使い方が巧妙」:ライトが手がけた帝国ホテルのように、階段やレベル差が生むリズムが面白い。
- 移築・復原によって、当時の壁の色(こすり出し)や家具が忠実に再現されており、当時の空気感までパッケージされている。
4. 見学の「特別感」と「難易度」
- 「予約が争奪戦」:月に数回の公開で定員も少ないため、予約が取れたこと自体に「プレミアム感」を感じます。
- 「内部撮影不可」:建物内部は撮影禁止となっていることが多いため、自分の目にしっかりと焼き付ける必要があります。ここでの内部の添付写真は配られた資料の写真になります。



土浦亀城氏と信子夫妻は、この家に98歳まで住まわれたそうです。段差が多い反バリアフリーの空間がかえって健康に良かったのかもしれません。
夫妻の死後は、女中さんがその後20年間も住まわれたそうです。
夫婦で建築家でしたが、当時は女性の建築家が活躍できる時代ではなく、信子夫人はインテリアや絵画デザインに力を注いでいたようです。館内の絵は全て信子夫人の作品。グレーと黄色のテーマカラーで家具、カーテンなどのファブリックが統一され、そのセンスは抜群でした。



現在の見学について(予約のコツなども公開)

現在は南青山で一般公開(予約制・月数回程度)が行われています。
- 場所:東京都港区南青山2-5-17(ポーラ青山ビルディング 敷地内)
- アクセス:東京メトロ「青山一丁目」駅から徒歩約2分
- 見学方法:公式Webサイト(ポーラ文化研究所など)からの事前予約が必要です。
予約は毎月1日の10:00から受付ですが、10:00前からスタンバイしていてもクレジット決済でグルグル画面が「決済中」になっている時に完売してしまって取れない、ということを4回繰り返しました。
PCでやろうとすると時間がかかるのではないか?と考え、スマホでアプリをダウンロードして予約してみようと思いました。そして、見学会は水曜日の14:00~15:00、16:00~17:00の2回、
土曜日も11:00~12:00、14:00~15:00、16:00~17:00の3回ありますが、
一番取りやすいのは、水曜日の16:00~17:00です。この回は出遅れてしまったのにもかかわらず、取ることができました。

